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感染症予防 ヘルパンギーナ

感染症対策:手洗い


ヘルパンギーナとは夏季に流行しやすい感染症です。

 ヘルパンギーナ(Herpangina)は、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎であり、乳幼児を中心に夏季に流行する夏かぜの代表的疾患です。その大多数はエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA群に起因しますが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスで発症する場合もあります。

疫 学:
熱帯では通年性にみられますが、我が国では毎年5 月頃より増加し始め、7月頃にかけてピーク を形成し、その後減少します。患者の年齢は5歳以下が全体の90%以上を占め、1歳代がもっとも多く報告されています。

病原体:
エンテロウイルス属ピコルナウイルス科に属するポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群(CA)、コクサッキーウイルスB群(CB)、エコーウイルス、エンテロウイルスなどが原因ウイルスですが、ヘルパンギーナはCA が主な病因です。 エンテロウイルスとは主に腸管で増殖する小型のRNAウイルスすなわち脂質を含まない(エンベロープがない)小型のウイルスですので、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドン・ヨードを含む製剤が殺ウイルス効果を発揮します。 感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染で、回復後にも2 〜4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されることがあります。

臨床症状:
2〜4 日の潜伏期を経過し、突然の38〜40℃の発熱に続いて咽頭痛や咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内(軟口蓋から口蓋弓)に直径1〜5mmほどの赤味で囲まれた小水疱が出現します。小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴います。発熱は2 〜4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失します。発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、それによる脱水症などを呈することがありますが、ほとんどは予後良好です。 ヘルパンギーナの場合にもまれには無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあります。類似する症状を伴う疾患として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔内前方に水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎(発熱を伴わず、口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられます。

治療・予防:
時には脱水に対する治療が必要なこともあります。無菌性髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要です。 患児の口腔内病変に対しては、刺激を感じないように食事は柔らかく薄味にする必要がありますが、患児が水分不足にならないように経口補水液などを少しずつ頻繁に与えるようにしてください。 予防においては患児との接触予防策および飛沫予防策が重要ですので、次亜塩素酸ナトリウム製品で環境の消毒をこまめに行うことと、患児との接触後や排便後の手洗いを徹底するようにしてください。保育園や幼稚園などの乳幼児施設においては、手洗いの励行と排泄物の適正な処理、またタオルや遊具(おもちゃ等)を共用しないことなどが感染予防対策となります。

参考資料

1)NIID国立感染症研究所ホームページ ヘルパンギーナとは (2014年07月23日改訂)      
        https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.html
2)環境感染誌Vol.32 no.6, 2017, p344-354

本ページの内容は、これらの情報をもとに大洋製薬株式会社が作成いたしました。